時空日記 【西暦1912/03/15】

SF

この新しい「機械」が事務所にやってきてから、もう一週間が経つ。 ミスター・ヘンダーソンはこれを「タイプ・ライター」と呼び、私たち事務員はこれを使って手紙や報告書を作成するよう指示された。

正直に言うと、私はまだ、この鉄の塊と仲良くなれていない。 指先に力を込めて鍵盤(キー、と彼らは言う)を叩くと、小さなアームが跳ね上がり、インクを染み込ませたリボンを紙に打ち付ける。カシャン、カシャン、と小気味よい音が響き、まるで印刷されたかのように整然とした文字が並んでいく様は、見ていて飽きない。

インク壺にペン先を浸す必要も、書き損じて紙を丸める(そして上司に叱られる)回数も減った。私の震える癖字と違って、この機械が打つ文字は冷たいほどに均一で、誰が読んでも間違いようがない。それは確かに「効率的」なのだろう。

けれど、指が痛くなる。 慣れない配置のせいで、私はいつも「A」と「S」を打ち間違える。そして、一度間違えたら最後。専用の硬い消しゴムで、インクの染みを紙から削り取るように懸命に擦らなくてはならない。力を入れすぎれば、薄いタイプ用紙はすぐに破れてしまう。

手でペンを走らせていた時は、インクの濃淡や線の強弱に、その時の私の気分が(良くも悪くも)表れていたように思う。この機械が打つ「F」も、私が打つ「F」も、同じ形をしている。

私は、この機械の「オペレーター」になったのだろうか。 それとも、このカシャン、という音は、私の言葉を、かつてない速さで、もっと遠くまで届けてくれる翼になってくれるのだろうか。

明日は、今日よりも少しだけ、打ち間違いが減りますように。

(アンナ・ローレンス / 事務員)

「ご飯粒積み重ね委員会」副会長を務めています。
好きな言葉は「バイソン」です。
よろしくお願いします。

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